ネイティブアプリにできて、webアプリで実現できないこと|アプリ開発を検討する方へ【2026 年版】
1. はじめに
アプリ開発を検討する際、「ネイティブアプリとWebアプリ、どちらで開発すべきか」という相談をよくいただきます。
開発コスト、運用の手間、ユーザー体験、将来の拡張性 -考慮すべき要素は多岐にわたります。
特にPWA(Progressive Web Apps)によってWebアプリの機能が進化し、「Webアプリでも十分 ではないか」という選択肢も現実的になってきました。
実際、カメラ機能、位置情報、プッシュ通知など、以前はネイティブアプリの専売特許だった機能 の多くが、現在ではWebアプリでも利用可能です。
ただし、ネイティブアプリでないと実現できないクオリティも存在します。
本記事では、2026年現在の状況を踏まえ、機能面での違いに焦点を当てて整理します。あなたのプロジェクトに必要なのはどちらなのか、判断材料としてお役立てください。
2. 前提:ネイティブアプリとWebアプリの基本
ネイティブアプリ
各OS(iOS、Android)向けに開発され、App StoreやGoogle Play Storeからダウンロード・インス トールして使用するアプリです。Swift(iOS)、Kotlin/Java(Android)などの言語で開発されます。
Webアプリ
Webブラウザ上で動作するアプリケーションです。ユーザーが見る画面部分(フロントエンド)は HTML/CSS/JavaScriptで構築され、サーバー側(バックエンド)はRuby、PHP、Python等で開発 されます。インストール不要で、URLにアクセスするだけで利用できます。
PWA(Progressive Web Apps)
PWA(Progressive Web Apps)は、Webアプリにネイティブアプリのような機能を追加する技術の 総称です。オフライン動作やホーム画面への追加などが可能になります。ブラウザでアクセスで きるWebアプリでありながら、アプリのようにホーム画面から起動して使うこともできます。
技術進化による変化
Webアプリ、特にPWAの技術進化により、カメラやGPSなど、多くの機能が実現可能になりまし た。一方で、ネイティブアプリでないと実現できないレベルがあります。
次のセクションでは、具体的にどのような機能がネイティブアプリでないと実現できないのかを見 ていきます。
3. ネイティブアプリでないと実現できないレベル
2026年現在、Webアプリでは実現できない、またはネイティブアプリの方が優位な機能を5つ紹介します。
① Bluetooth・NFC(iOS環境での制限)
iOS環境では、WebアプリからBluetooth(ブルートゥース:近距離無線通信規格)やNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)へのアクセスに制限があります。特に「Web Bluetooth 」「Web NFC」といった“ブラウザから直接ハードウェアにアクセスするWeb API(API=OSやブラ ウザの機能をアプリから呼び出すための窓口)”は、iOSのブラウザでは未対応または制約が大きい状況です。
Android環境では(主にChromeなど一部ブラウザで)一部利用可能ですが、iOSユーザーも対象 に、Bluetooth/BLE(BLE=Bluetooth Low Energy:省電力Bluetooth)やNFCの“タグ読み書き等” を主要機能として安定提供したい場合は、ネイティブアプリ(OS向けに作るアプリ)またはネイティ ブ機能を呼び出せる構成の検討が必要になります。
補足として、iPhoneはNFCタグに含まれるURLを開く等のOS標準動作は可能ですが、「WebアプリがNFCタグを自由に読み書きする(=Web NFC APIで制御する)」こととは別物です。
ネイティブアプリが必要なケース:
- IoT機器との連携(スマートウォッチ、センサー機器など)
例:BLEで機器と接続して計測データ取得・設定変更・ペアリング(ペアリング=機器同士を接続 設定すること)を行う
- 決済端末との連携
注意:決済は「NFCが使えるか」だけでなく、OSのセキュリティ要件・認証・審査要件の影響が大 きく、Webだけで完結しにくい領域です。
- スマートホーム機器の制御
例:ローカル(端末近距離)連携が必須の機器制御を、iOSのWebではAndroidと同一品質に揃えるのが難しい場合があります。
- 交通系ICカードの読み取り
注意:交通系ICは一般的なNFCタグ(NDEF:NFC Data Exchange Format=NFCタグに載せる 標準的な軽量データ形式)の読み書きとは別の扱いになりやすく、Webでは対応が困難なケースが多いです。
② 高度なカメラ制御
Webアプリでも基本的な写真撮影や動画撮影は可能です。しかし、パン・チルト・ズームなど細か いカメラ操作や、マニュアルフォーカス、RAW撮影といった高度な制御は、ネイティブアプリでないと実現できません。
ネイティブアプリが必要なケース:
- 専門的な撮影アプリ
- AR(拡張現実)・VR(仮想現実)系アプリ
- リアルタイムでのカメラエフェクト処理
- 高度な画像処理が必要なアプリ
③ 長時間のバックグラウンド処理
ネイティブアプリは、画面がオフになっても継続して動作させることができます。Webアプリも一部 のバックグラウンド処理(データ同期など)は可能ですが、長時間の音声・動画録画は画面スリー プ時に中断される仕様になっています。また、iOS環境ではBackground Sync API(バックグラウ ンドでのデータ同期機能)が使えないという制約もあります。
必要なケース:
- 長時間の音声・動画録画
- 継続的な位置情報トラッキング(ランニングアプリ、配送追跡など)
- バックグラウンドでの継続的なデータ同期(iOS環境)
- 常時稼働が必要な監視系アプリ
④ ホーム画面ウィジェット
ホーム画面に情報を常時表示するウィジェット機能は、ネイティブアプリのみで実現可能です。
PWAではホーム画面にアイコンを配置することはできますが、ウィジェットには対応していません。
必要なケース:
- 天気アプリ(現在の天気を常時表示)
- カレンダー・スケジュール管理
- タスク管理(今日のタスクを一目で確認)
- 株価やニュースの速報表示
⑤ プッシュ通知の信頼性
プッシュ通知:
PWAでもプッシュ通知は利用可能ですが、いくつかの制約があります。iOS環境で は2023年からようやく対応しましたが、まだ不安定な面があります。また、PWAのプッシュ通知は 「ホーム画面に追加」が前提となるため、通知許可を得るハードルが高いという課題もあります。エンゲージメントを重視するサービスでは、この点が課題になる場合があります。
必要なケース:
- 確実なプッシュ通知が必要なサービス(SNS、ニュース配信、Eコマース)
4. UI/UXと操作性の違い
機能面以外にも、ネイティブアプリとWebアプリには操作性の違いがあります。
ネイティブアプリの滑らかな操作感
ネイティブアプリは、OSに最適化されているため、以下のような点で優れた体験を提供します。
アプリ起動の速度
ネイティブアプリは端末にインストールされているため、タップしてから起動するまでの時間
が短く、すぐに使い始められます。
スクロール時の滑らかさ
指でスワイプした際の反応が自然で、画面が指の動きに追従します。この「サクサク動く」
感覚は、ユーザー体験において重要な要素です。
画面遷移のアニメーション
画面が切り替わる際のアニメーションが滑らかで、違和感がありません。特に複雑なグラフィック を扱うアプリでは、この差が顕著に現れます。
OSネイティブUIコンポーネントによる自然な体験
ネイティブアプリは、各OSが提供する標準のUIコンポーネント(ボタン、メニュー、入力フォームなど)を使用できます。そのため、ユーザーが普段使い慣れている操作感で利用でき、ユーザーの 学習コストが低くなります。
iOSならiOSらしい、AndroidならAndroidらしいデザインガイドラインに準拠したアプリを作ること で、ユーザーは直感的に操作できます。
Webアプリの進化
Webアプリも技術的に進化しています。View Transitions API(画面遷移を滑らかにする技術)な ど新しい技術の登場により、ネイティブアプリに近い体験を提供できるようになってきました。
しかし、ブラウザを経由する仕組み上、体感としてはネイティブアプリの方が依然として優位な状 況です。特に、高頻度で操作するアプリや、リアルタイム性が求められるアプリでは、この操作性 の差がユーザー体験に影響します。
5. 機能以外の判断軸
機能面や操作性以外にも、アプリ開発の方式を選ぶ際に考慮すべき要素があります。
ビジネスモデルによる判断
ストア手数料
2025年12月に施行されたスマホ新法(特定ソフトウェア競争促進法)により、手数料体系が変更 されました。App StoreやGoogle Play Store経由でアプリ内課金を行う場合、従来は最大30%で したが、現在はApp Storeで最大26%(中小開発者や継続利用は10%)となっています。
また、外部決済システムを利用する場合、Appleは15%、Googleは20%の手数料が発生します。
一方、Webアプリであれば、これらのストア手数料は発生せず、クレジットカード決済などの手数 料のみで済みます。
スマホ新法の詳細や外部決済・代替ストアの現実的な判断基準については、【2025年12月18日 施行】スマホ新法でアプリ運営企業は何をすべきか?外部決済・代替ストアの現実的な判断基準 で詳しく解説しています。
ストア流入の価値
新規サービスの場合、App Storeでの検索からユーザーを獲得できる可能性があります。一方、
既にブランド認知がある企業の場合、ストア流入の優先度は相対的に低くなります。
課金型のビジネスモデルではWebアプリが手数料面で有利になるケースがありますが、ストアで の露出が重要な場合はネイティブアプリの選択も検討すべきでしょう。
開発コスト
以前は、Webアプリの方が開発費用を抑えられるという認識がありました。しかし、Flutter(フラッ ター:Googleが開発したクロスプラットフォーム開発フレームワーク)やReact Native(リアクトネイ ティブ:Metaが開発したクロスプラットフォーム開発フレームワーク)といったクロスプラットフォー ム開発技術の登場により、初期開発費用の差は縮小しています。
ただし、端末固有の機能を多用する複雑なアプリの場合は、依然として開発コストに差が出る ケースもあります。
初期開発費用だけでなく、3年間の総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership。初期開発費 用、運用保守費用、App Store手数料、追加機能開発費用などの合計)で考えることも重要で す。ビジネスモデル別の詳しいコストシミレーションについては、PWAは本当に流行らないの か?| 年率30%成長の事実とネイティブアプリとの差で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
6. 補足:開発方法の選択肢
ネイティブアプリとWebアプリの選択以外にも、開発方法にはいくつかの選択肢があります。
ネイティブアプリのクロスプラットフォーム開発
Flutter(フラッター)やReact Native(リアクトネイティブ)を使うことで、一度の開発でiOSとAndroid 両方に対応できます。これらの技術は、ネイティブアプリの機能にフルアクセスでき、パフォーマ ンスもネイティブに近いレベルを実現します。
開発効率を高めつつ、ネイティブアプリのメリットを享受できる選択肢です。
Webアプリのストア公開
PWA(Progressive Web Apps)をTWA(Trusted Web Activity:GoogleがAndroid向けに提供す る技術で、PWAをGoogle Play Storeで配信できる仕組み)やCapacitor(カパシター:Webアプリ をネイティブアプリとしてラッピングするフレームワーク)などでラッピングすることで、App Storeや Google Play Storeに公開できます。
Webアプリの開発スタイルを維持しながら、ストアでの露出も得られる方法です。
7. まとめ
Webアプリ、特にPWAの技術進化により、カメラやGPS、プッシュ通知など、多くの機能が実現可 能になりました。しかし、Bluetooth・NFCへのアクセス(iOS環境)、高度なカメラ制御、長時間の バックグラウンド処理、ホーム画面ウィジェット、スクリーンショット防止機能など、ネイティブアプリ でないと実現できない機能も存在します。
また、機能面以外にも、操作性やUI/UXの滑らかさではネイティブアプリに優位性があります。
どちらを選ぶべきかは、必要な機能とビジネスモデルによって判断が変わります。ストア手数料を 抑えたい課金型のサービスならWebアプリが有利なケースもありますし、ストアでの露出や確実 なプッシュ通知が重要ならネイティブアプリが適しています。
アプリ開発を検討される際は、自社のサービスに本当に必要な機能を見極め、ビジネスモデルと 照らし合わせて判断することをおすすめします。
