当ブログでは以前、iOSのPWA対応状況を調査(2026年版)でiPhoneでの対応状況を整理しました。本記事はそのAndroid編です。
日本のモバイル端末からのWeb閲覧の割合は、2026年8月時点でiOSが64.74%、Androidが35.25%でした。これはページの閲覧数をもとにした推計で、利用者数そのものではありません。それでも、閲覧のおよそ3分の1はAndroidからということになります。
出典:StatCounter「Mobile Operating System Market Share Japan」、2026年8月のデータ
本記事は、自社サービスのアプリ化を検討している事業担当者やWeb担当者の方に向けて、次の点をまとめています。
- AndroidでPWAがどのような仕組みで動くのか
- インストールや通知について、iOSと何が違うのか
- Androidでできること・できないこと
- Google Playで配信する方法と、その注意点
PWAの基本的な仕組みは、PWA(Progressive Web Apps)とは|基礎知識から活用事例まで徹底解説で解説しています。
AndroidでPWAが動く仕組み
この節では、AndroidでPWAをインストールしたときに、端末の中で何が起きているのかを説明します。
WebAPKとは
Android版のChromeでPWAをインストールすると、「WebAPK」というものが自動で作られます。APKは、Androidアプリのファイル形式のことです。つまりWebAPKは、「Webサイトを開くための小さなAndroidアプリ」のようなものです。
WebAPKは、端末の提供元が信頼できる仕組みで署名します。Chromeの場合はGoogle Play開発者サービス、Samsung製端末のSamsung Internetの場合はSamsungが署名します。署名は、「正規の送り主から届いたものだと証明する印鑑」のような役割を持ちます。
WebAPKとしてインストールされたPWAには、次の特徴があります。
- ホーム画面だけでなく、アプリ一覧やAndroidの設定画面にも表示される
- 対象のサイト内のリンクをタップすると、ブラウザではなくアプリとして開く
- マニフェスト(アプリ名やアイコンなどを書いた設定ファイル)を更新すると、その内容がアプリにも反映される
アプリ一覧に並ぶため、見た目や基本的な起動のしかたは、ストアからインストールしたアプリに近くなります。ただし、権限の扱いや実行環境、更新の仕組みは異なります。この仕組みは2017年に公開された解説記事で紹介されています。
ブラウザによる違い
WebAPKを作れるのは、Chromeと、Samsung製端末上のSamsung Internetです。web.devの説明(2024年9月更新)では、Firefox、Microsoft Edge、Opera、Braveなどでは、ホーム画面に「ショートカット」として追加されるとされています。扱いはブラウザやそのバージョンによって変わることがあります。ショートカットはアプリ一覧や設定画面には表示されず、OSとの連携機能や、インストール済みであることを条件とする機能が使えない場合があります。
ただし、日本ではChrome以外のブラウザの利用はまだ少数です。2026年8月の日本のモバイルブラウザの割合は、Safari 48.69%、Chrome 46.97%に対し、Firefoxは0.99%、Samsung Internetは0.55%でした。なお、このChromeの数値にはiPhone版Chromeも含まれます。
出典:StatCounter「Mobile Browser Market Share Japan」、2026年8月のデータ
そのため、まずはAndroid版Chromeでの動作を基準に設計し、そのほかのブラウザでも最低限の使い方ができるかを実機で確認する、という進め方が現実的です。
インストールのしやすさ:iOSとの一番の違い
この節では、AndroidでPWAをインストールしてもらう流れと、そのために必要な条件を説明します。
iOS版の記事で触れたように、iPhoneでは利用者が自分で共有メニューから「ホーム画面に追加」を操作する必要があります。一方、Android版のChromeには、ブラウザ側からインストールを案内する仕組みがあります。
PWAとしてインストールできる条件
ChromeでPWAとしてインストールできるようにするには、主に次の条件を満たす必要があります。
- まだインストールされていない
- HTTPS(通信が暗号化された接続)で配信している
- マニフェストに、アプリ名、192pxと512pxのアイコン、起動時に開くページ(start_url)、表示方法(display)が書かれている
- 利用者がページを1回以上タップし、30秒以上見ている
上の条件は、「PWAとしてインストールできるか」の基準です。これとは別に、Android版Chromeには、サイトの状態や過去14日間の訪問回数などをもとに、利用者がインストールしそうなページを機械学習で予測し、インストールを提案する仕組みがあります。条件を満たすサイトでは通常のインストール画面が、それ以外のページでは手動でインストールするための画面が表示されます。そのため、条件を満たしても毎回提案が出るとは限らず、逆に条件を満たさないページで提案が出ることもあります。
出典:Chrome for Developers「How Chrome helps users install the apps they value」、2024年7月更新
以前は、Service Worker(オフライン表示などを裏側で担うプログラム)の特定の実装も条件でした。Chromeはモバイル版108以降でこの条件を外しました。
現在のインストール条件の一覧にも、Service Workerは含まれていません。ただし、Service Worker自体が不要になったわけではありません。オフライン表示や後述のバックグラウンド処理など、PWAの多くの機能は引き続きService Workerを使って実装します。
独自のインストールボタンとリッチインストールUI
条件を満たすと、サイト側で「beforeinstallprompt」という合図(イベント)を受け取れるようになります。これを使うと、「会員登録が終わったとき」など、好きなタイミングで自社デザインのインストールボタンを出せます。
さらにAndroid版Chrome 94以降では、マニフェストにスクリーンショット(screenshots)を入れると、アプリストアのような画像つきのインストール画面を表示できます。説明文(description)の追加も推奨されています。「何のアプリか」が伝わりやすくなるため、導入しておきたい設定です。
試験提供中の新しいインストールの仕組み
2026年には、HTMLの「install要素」や「navigator.install()」という、インストールボタンをより簡単に設置するための新しい仕組みが試験提供されています。ChromeとEdgeのバージョン148〜153で、オリジントライアル(正式公開前に限られたサイトで試せる仕組み)として提供されています。
ただし、まだ試験段階の機能です。本番のサービスで使うかどうかは、正式な提供開始を待って判断するのが無難です。
AndroidのPWAでできること
この節では、Android版Chromeで使える主な機能を、利用条件とあわせて紹介します。
プッシュ通知とバッジ
Android版Chromeでは、サイトからポップアップで通知の許可を求め、許可されれば通知を送れます。iPhoneのように「ホーム画面に追加したときだけ」という制限はありません。
アイコンに未読数などの数字を表示する「Badging API」は、Androidでは使えません。その代わり、インストールしたWebアプリに未読の通知があると、Androidがアイコンに通知バッジを表示します。
Androidの通知バッジは、対応するランチャー(ホーム画面のアプリ)でアイコン上の点(ドット)として表示され、件数はアイコンを長押ししたときのメニューに表示されます。iPhoneのようにアイコンに数字を出すことは前提にできないため、表示のされ方は端末で確認してください。
バックグラウンド処理
バックグラウンド処理とは、画面を閉じている間に裏で動く処理のことです。iOSでは制限が大きい部分ですが、Android版Chromeでは次の3つが用意されています。
- Background Sync:電波がなくて送れなかったデータを、通信が戻ったときに送ります。ページを閉じていても動き、失敗したら再試行します。ChromeやEdgeは対応していますが、FirefoxやSafariは対応していません。
- Periodic Background Sync:定期的に最新データを取得します。ただし、インストールしてアプリとして起動していることが条件です。実行する頻度は開発者ではなくブラウザが決め、よく使われるアプリほど頻度が高くなります。
- Background Fetch:大きなファイルを裏でダウンロードします。進み具合はブラウザが表示します。Chrome 74以降で利用できます。
Bluetooth・NFC・USBなどの端末連携
iPhoneのPWAでは使えない端末連携も、Android版Chromeでは一部利用できます。ただし、できることの範囲には限りがあります。
| 機能 | できること | 主な制限 |
|---|---|---|
| Web Bluetooth | Android 6.0以降で、近くのBLE機器と接続・読み書き | BLE(省電力のBluetooth)のみ。機器の検索には利用者の操作が必要 |
| Web NFC | Chrome 89以降で、NFCタグの読み書き | NDEF形式のみ。カードの模倣や端末間通信は不可。画面表示中のみ |
| WebUSB | Chrome 61以降で、USB機器と通信 | 利用者が機器を選ぶ操作が必要 |
| Web Serial | Chrome 148以降で、シリアル通信の機器と通信 | USBなどBluetooth以外の接続は、対応する端末が限られる |
Web Serialは、Chrome 148(2026年5月公開)でAndroidに対応しました。ただし、Bluetooth以外のシリアル接続は一部の端末に限られると告知されています。
NDEFは、NFCタグに文字やURLを決まった形で書き込むための共通規格です。そのため、交通系ICカードの残高を読むなど、NDEF形式以外のカードを読み取る使い方はできません。業務で使う機器と連携したい場合は、その機器が対応する通信方式を先に確認してください。
共有・連絡先・ストレージ
- 共有先としての表示(Web Share Target):ほかのアプリの「共有」メニューに、自社のPWAを表示できます。Android版Chrome 76以降で使え、インストールが前提です。
- 連絡先の選択(Contact Picker):利用者が選んだ連絡先の名前・メール・電話番号を取得できます。Chrome 80以降で使え、公式ドキュメントではAndroidのみの対応とされています。
- ストレージ(保存領域):Chromeでは、1つのサイトがディスク容量の最大60%まで使えます。ただし端末の空きが少なくなると、最近使われていないサイトからデータが削除されることがあります。
Androidでも残る制約と注意点
この節では、Androidでも把握すべき制約と注意点をまとめます。
機能ごとの利用条件
前の節で紹介した機能の多くには、次のような条件があります。
- HTTPSでの配信が必要
- 利用者のタップなどの操作をきっかけにしないと動かない
- 一部の機能は、画面を表示している間だけ動く(Web NFCなど)
- インストールしていないと使えない(Periodic Background Sync、Web Share Targetなど)
また、これらは主にChromeでの対応状況です。先に述べたとおり、Chrome以外のブラウザではショートカットとして追加される場合があり、OSとの連携機能などが使えないことがあります。
通知許可の自動取り消し
Chromeは、利用頻度が非常に低いのに通知の多いサイトについて、通知の許可を自動で取り消す仕組みを導入しました。Android版とデスクトップ版の両方が対象ですが、インストール済みのWebアプリは対象外とされています。
またAndroid版Chromeでは、迷惑な通知を機械学習で見分けて警告を表示する機能も始まっています。
つまり、「ブラウザで通知を許可してもらえば十分」とは言い切れません。通知を長く届けたい場合は、インストールしてもらう導線と、読まれる内容・頻度の通知をあわせて設計することが大切です。
ネイティブアプリでないと難しいこと
Androidでも、ホーム画面のウィジェットや、アプリを閉じた状態での長時間の処理などは、ネイティブアプリ(各OS向けに専用に作るアプリ)の方が向いています。詳しくはネイティブアプリにできて、webアプリで実現できないことをご覧ください。
Google Playで配信する方法(TWA)
この節では、PWAをGoogle Playのアプリとして配信する方法と、公開後にかかる手間を説明します。
仕組みと必要なもの
TWA(Trusted Web Activity)は、自社のAndroidアプリの中で、自社のPWAを全画面で開くための仕組みです。Android版Chrome 72以降で利用できます。たとえるなら、「PWAをGoogle Playに並べるための入れ物」です。
TWAの主な特徴は次のとおりです。
- アプリとWebサイトが同じ運営者のものであることを、Digital Asset Links(サイトとアプリの持ち主が同じであることを示す設定)で確認する
- 画面の表示は利用者のブラウザが行うため、Webを更新すればアプリの内容も更新される
- Androidアプリ側のコードから、Web側のCookieやlocalStorage(ブラウザ内の保存領域)を直接読むことはできない(Web側では通常どおり使える)
- 対応していないブラウザでは、ツールバーつきの簡易的な表示に切り替わる
作成には、Bubblewrapというツールなどを使います。また、Google Playのデベロッパー登録には、1回限り25米ドルの登録料がかかります。
出典:Play Console ヘルプ「Google Play Console を使ってみる」
公開後の運用:ターゲットAPIレベルと課金ルール
TWAで公開したアプリも、Google Playのアプリとしてのルールを守る必要があります。代表的なものが次の2つです。
- ターゲットAPIレベル要件:アプリが対象とするAndroidのバージョンを、定期的に引き上げる必要があります。2026年8月31日以降、新規アプリとアップデートはAndroid 16(APIレベル36)以上が対象です。申請すれば2026年11月1日まで延長できます。
- デジタル商品の課金:Google Playで配信するアプリがデジタル商品やサブスクリプションを販売する場合、原則としてGoogle Play Billing(Google Playの課金システム)への対応が必要です。
課金のルールは、日本では2026年秋に変わったばかりです。2026年9月30日から、Google Playのサービス手数料の変更とあわせて、課金方法の選択肢を広げる新しいプログラムが日本でも使えるようになりました。一方、日本向けの従来の外部決済プログラムは、2026年9月30日で新規受付を終了し、2027年3月31日で終了します。参加中の開発者は、それまでに「お支払い方法の選択プログラム」へ移行する必要があります。
出典:Play Console ヘルプ「Google Play のサービス手数料引き下げについて」、Play Console Help「Enrolling in the external payments programme」
Google Playの課金システム以外を使う場合でも、サービス手数料はかかります。制度が移行している途中のため、有料コンテンツを扱うサービスは、設計段階でGoogle Play のお支払いに関するポリシーと最新のヘルプを確認してください。
TWAは「ストアで検索される入り口」を増やせる一方、こうした対応が定期的に発生します。
Google Playでの配信を含め、自社サービスに合う公開方法を検討したい場合は、お問い合わせフォームからご相談いただけます。
iOSとAndroidのPWA対応比較表
ここまでの内容を、iOSと並べて整理します。Androidは主にChromeでの状況です。
| 項目 | Android(Chrome) | iOS(Safari) |
|---|---|---|
| インストールの案内 | ブラウザが案内することがある。独自ボタンも設置可 | 利用者が共有メニューから手動で追加 |
| インストール後の表示 | アプリ一覧や設定画面にも表示(WebAPK) | ホーム画面に表示 |
| プッシュ通知 | ブラウザで開いたサイトからも利用可 | iOS 16.4以降。ホーム画面に追加した場合のみ |
| アイコンのバッジ | 未読通知があるとOSが通知バッジ(ドット)を表示。数字の指定は不可 | Badging APIで数字を表示可 |
| バックグラウンド処理 | Background Syncなどが、APIごとの条件つきで利用可 | 制約が大きい |
| Bluetooth・NFC・USB | 条件つきで利用可 | 非対応 |
| ストアでの配信 | TWAでGoogle Playに公開可 | — |
表では、使える機能の数はAndroidが多く見えます。ただし、日本ではiPhoneからの閲覧が多いため、実際の設計ではiOS側の制約が基準になることが少なくありません。
PWAで足りるかを判断するポイント
この節では、自社サービスでPWAを選ぶかどうかを考えるときの確認項目を挙げます。
- 利用者のOSの内訳:自社サイトのアクセス解析で、iPhoneとAndroidの割合を確認します。業務用に配布する端末が決まっている場合は、そのOSを基準にします。
- 必須の機能が両OSで使えるか:「Androidでは使えるがiPhoneでは使えない」機能が必須なら、PWAだけでは要件を満たせません。
- 通知の重要度:通知がサービスの中心なら、インストールしてもらう導線を最初から設計に入れます。
- ストア配信が必要か:Google Playでの検索流入を期待するならTWAを検討します。その場合は、定期的な要件対応も運用計画に含めます。
これらの項目で迷う場合は、まずPWAで小さく始め、利用状況を見てからストア配信やネイティブアプリを検討する、という進め方もあります。
よくある質問
AndroidでPWAのインストール案内が表示されないのはなぜですか?
Chromeのインストール条件を満たしていない可能性があります。HTTPSで配信しているか、マニフェストにアプリ名・192pxと512pxのアイコン・start_url・displayがあるかを確認してください。すでにインストール済みの場合や、ページをタップしていない・閲覧が30秒未満の場合も表示されません。また、条件を満たしていても、案内を出すかどうかはChromeが判断するため、毎回表示されるとは限りません。案内が出ない場合でも、Chromeのメニューからインストールできることがあります。
出典:web.dev「What does it take to be installable?」
PWAをGoogle Playで公開できますか?
公開できます。TWA(Trusted Web Activity)という仕組みでPWAをAndroidアプリとして包み、Google Playで配信します。公開後は、ターゲットAPIレベル要件への対応など、Google Playのルールに沿った運用が必要です。
Samsung製のスマートフォンでも同じように使えますか?
Chromeであれば、ほかのAndroid端末と同じくWebAPKとしてインストールされます。Samsung製端末上のSamsung InternetでもWebAPKになります。ただし、使える機能はブラウザごとに異なるため、実機での確認をおすすめします。
Androidではインストールしなくても通知を送れますか?
送れます。Android版Chromeでは、ブラウザで開いたサイトからでも通知の許可を求められます。ただし、利用頻度が低く通知の多いサイトは許可が自動で取り消されることがあり、インストール済みのWebアプリはその対象外です。
まとめ
- Android版Chromeでは、PWAがWebAPKとしてインストールされ、通常のアプリに近い形で使えます。
- ブラウザ側からインストールを案内する仕組みがある点が、iOSとの一番の違いです。
- バックグラウンド処理や端末連携も使えますが、機能ごとに利用条件があります。
- 通知許可の自動取り消しはインストール済みアプリが対象外のため、インストールの導線が大切です。
- 日本ではiPhoneからの閲覧が多いため、iOSとAndroidの両方を前提に判断しましょう。
自社サービスにはPWA・ネイティブアプリ・TWAのどれが合うか、整理したい場合はお問い合わせフォームからご相談ください。要件を伺ったうえで、進め方を一緒に検討します。
