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2026年6月2日

技術的負債とは|リファクタリングとAIエージェント活用で解消する

Webシステムやモバイルアプリを運用する中で、「機能追加に時間がかかるようになった」「バグ修正が増えている」「エンジニアが疲弊している」といった課題を感じていませんか。

これらの多くは「技術的負債」が原因です。技術的負債は、開発時に後回しにした改善や、とりあえずの対応が積み重なった結果、将来的に支払わなければならないコストを指します。放置すると、保守運用の負担が増大し、ビジネスにも深刻な影響を与えかねません。

本記事では、技術的負債の正体、なぜ発生するのか、そしてリファクタリングや生成AIを活用した解消方法について解説します。

技術的負債とは何か?

技術的負債とは、開発時に「後回しにした改善」や「とりあえずの対応」が積み重なった結果、将来的に支払わなければならないコストのことです。

金融における「負債」と同じように、短期的には開発スピードを上げられても、長期的には保守コストが膨らんでいくという考え方です。具体的には、以下のような状況を指します。

  1. 納期を優先するために、丁寧な設計やテストを省略してリリースした
  2. 急な不具合対応で、その場しのぎの修正を重ねてしまった
  3. 古い技術で作られたシステムを、そのまま使い続けている
  4. ドキュメントを作成せず、担当者しか仕様が分からない状態になっている

こうした判断は、当時の状況下では合理的だったかもしれません。しかし時間が経つにつれて、コードの理解が困難になり、修正に時間がかかるようになり、最終的には新機能の追加すら難しくなっていきます。

技術的負債の種類

技術的負債には複数の種類があり、それぞれ異なる形で保守運用に影響を与えます。5つの種類についてご説明します。

アーキテクチャー負債

システムの基盤設計が将来の拡張や変更に対応できない状態を指します。例えば、スケールしない設計や、モノリシックな(複数の機能を分割せず、1つの巨大な塊として構築された)構造が該当します。ユーザー数が増えた際にパフォーマンスが低下したり、新機能を追加する際に全体への影響が大きくなったりする状況です。

コード負債

重複したロジック、分かりにくい変数名、コーディング規約に沿っていないコードなど、コードそのものの品質に関わる負債です。いわゆる「スパゲッティコード」と呼ばれる状態や、技術的な近道を選んだ結果として発生します。コードレビューが機能していない環境では、特に蓄積しやすい傾向があります。

インフラ・DevOps負債

古いデプロイ手順や自動化されていないCI/CDパイプラインなど、開発・運用プロセスに関わる負債です。手動デプロイに依存していたり、テスト環境が未整備だったりする状況が該当します。デプロイのたびに緊張が走る、リリースに丸一日かかる、といった状態はこの負債のサインです。

プロセス負債

チーム内の情報共有不足、曖昧なワークフロー、整備されていないドキュメントなど、開発プロセスそのものに関わる負債です。特定のエンジニアにしか分からない属人化や、ナレッジが散在している状況が該当します。担当者が休暇を取ると業務が止まる、新メンバーのオンボーディングに数ヶ月かかる、といった課題が現れます。

セキュリティー負債

暗号化や認証の省略、脆弱性へのパッチ適用の遅れなど、セキュリティ対策を後回しにした結果として発生する負債です。古いライブラリを使い続けていたり、セキュリティ対策が「後でやる」リストに入ったまま放置されていたりする状況が該当します。

技術的負債が発生する5つの原因

技術的負債は、特定の誰かの怠慢ではなく、日々の企業活動の中で意図せずとも蓄積されていきます。主な原因を理解することで、今後の発生を抑制することができます。

ビジネス要求の圧力

納期短縮や早期市場投入を優先し、適切な設計やテストを省略してしまうケースです。市場競争の中でスピードが求められる結果、「まずはリリースして、後で改善する」という判断が繰り返されます。しかし、リリース後は次の機能開発に追われ、「後で」が永遠に来ないことも少なくありません。

場当たり的な改修

システム全体の設計を考慮せず、緊急対応や機能追加のために一時的な修正を繰り返すケースです。「今動けばいい」という判断が積み重なり、コードの複雑性が増していきます。1つ1つの修正は小さくても、積み重なることで全体の見通しが悪くなり、次の修正がさらに困難になるという悪循環に陥ります。

技術・知識の陳腐化

システムのレガシー化により最新技術と連携できなくなったり、仕様を知る者が不在になるブラックボックス化が起きたりするケースです。開発当時は最新だった技術も、数年後には古くなります。また、当時の開発メンバーが退職や異動で不在になると、システムの仕様や設計意図が分からなくなり、改修のハードルが上がります。

ドキュメントの欠如

仕様書や設計書、運用マニュアルの未整備・更新不足により、改修時の影響範囲特定が困難になるケースです。開発当初は「コードを見れば分かる」と考えていても、時間が経つと当時の意図が分からなくなります。ドキュメントがないことで、新しいメンバーが参加するたびに同じ説明を繰り返すことになり、チーム全体の生産性が低下します。

レガシーシステムの存在

長年稼働している古い基幹システムの複雑さと柔軟性の欠如により、最新技術との連携や改修が困難になるケースです。「触らぬ神に祟りなし」という意識が働き、改善を先送りにした結果、さらに改修が困難になるという状況に陥ります。

アジャイル開発と技術的負債の関係

アジャイル開発は、短期間でのリリースを繰り返すため、技術的負債が発生しやすい側面があります。しかし同時に、反復的なアプローチによって継続的に改善するチャンスも提供します。

Shopifyの「25%ルール」に学ぶ

多国籍eコマース企業のShopifyのエンジニアが発信しているShopify Engineering Blogで、技術的負債に向き合う考え方として、日常的な改善に10%、週次の改善に10%、月次・年次の検討に5%を充てる『25%』の考え方が紹介されています

これにより、新機能開発と負債解消のバランスを保ちながら、持続可能な開発体制を実現しています。「今週は新機能、来週は負債解消」といった形で計画的にリソースを配分することで、負債が蓄積しすぎる前に対処できる仕組みです。

このアプローチは、技術的負債を「避けるべきもの」ではなく、「戦略的に管理すべきもの」として捉えている点が特徴的です。完全にゼロにすることは現実的ではないため、一定の割合で継続的に返済していくという考え方は、多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。

参照元:Shopify Engineering – 25% rule

技術的負債が企業に与える影響

技術的負債を放置すると、保守運用だけでなく、ビジネス全体に影響が及びます。ここでは、実務上で現れる具体的な影響について整理します。

開発速度の低下

新機能追加に時間がかかるようになります。既存コードの理解に時間を取られ、実装に着手できるまでに数日かかることもあります。また、修正の影響範囲が読めず、慎重にならざるを得ないため、本来であれば1日で終わる作業に1週間かかる、といった状況が生まれます。

保守コストの増加

バグ修正や改修に多くの工数が必要になります。IT予算の大部分が技術的負債の管理に費やされ、新しい取り組みへの投資ができなくなります。また、技術的負債の多いプロジェクトはエンジニアにとって魅力的ではないため、採用が困難になったり、既存メンバーが離脱したりするリスクも高まります。

実際、Protiviti社の2023年調査によると、企業のIT予算の30%以上が技術的負債の管理に費やされているというデータもあります。

ビジネスリスクの増大

システムクラッシュやセキュリティ脆弱性が発生しやすくなります。2013年のHealthCare.gov(米国の医療保険サイト)のローンチでは、システムクラッシュ、セキュリティーの脆弱性、機能不全といった深刻な問題を引き起こしました。

また、市場の変化に迅速に対応できず、競争力が低下します。競合他社が新機能をリリースしても、自社は技術的負債の対応に追われて対抗できない、という状況に陥ります。結果として、イノベーションへの投資が後回しになり、ビジネスの成長機会を逃すことになります。

組織への心理的影響

エンジニアのモチベーションが低下します。「どうせ直らない」という諦めの雰囲気がチーム内に広がり、新しいアイデアや改善提案が出にくくなります。

リファクタリングで技術的負債を解消する方法

技術的負債の解消には、戦略的なアプローチと具体的な戦術が必要です。ここでは、実践的な解消方法について解説します。

ステップ1 – 負債の可視化と優先順位付け

まずは、自社が抱える技術的負債を客観的に把握することから始めます。静的解析ツールを用いたり、専門家によるシステムアセスメントを実施したりすることで、負債の所在と深刻度を可視化します。

その上で、「ビジネスへの影響度」と「解消の難易度」の2軸で評価し、優先順位を決定します。例えば、「影響度が高く、難易度が低い」ものから着手し、「影響度が低く、難易度が高い」ものは後回しにするといった判断です。

すべての負債を一度に解消することは現実的ではありません。限られたリソースの中で最大の効果を得るために、取り組むべき負債を明確にすることが重要です。

ステップ2 – 解消ロードマップの策定

優先順位付けができたら、短期的に解消すべき高リスクな負債と、中長期的に取り組む大規模な負債に分類します。経営層とIT部門で共通目標として計画を立て、リソース配分と実施タイミングを明確化します。

ロードマップを策定する際は、Shopifyの25%ルールのように、開発サイクルの一定割合を負債解消に充てるという方法も有効です。「今四半期は新機能8割・負債解消2割」といった具体的な配分を決めることで、継続的な改善が可能になります。

リファクタリングで内部を改善する

リファクタリングとは、システムの外部機能は変えずに、内部のコードや設計を整理・改善する手法です。継続的に少しずつ改善することで、コードの健全性を保ちます。

具体的には、重複したコードを関数化する、分かりにくい変数名を適切な名前に変更する、複雑な処理を小さな単位に分割する、といった作業が含まれます。大規模な書き直しではなく、日々の開発の中で少しずつ改善していくアプローチです。

リファクタリングの利点は、リスクが比較的低いことです。外部機能に影響を与えないため、既存のテストが通れば、安全に改善を進められます。

再構築(リビルド)で根本から作り直す

負債が深刻なコンポーネントや、ビジネス上重要な機能については、新しい技術やアーキテクチャでゼロから作り直すという選択肢もあります。モダンなアーキテクチャ(マイクロサービス、クラウドネイティブなど)への移行を検討する際は、この方法が適しています。

ただし、再構築は大規模な投資とリスクを伴います。既存機能の完全な再現が必要であり、移行期間中のトラブルにも備えなければなりません。そのため、ビジネス上の優先度が高く、かつ既存システムの改修が現実的ではない場合に限定して検討すべきでしょう。

段階的な移行でリスクを抑える

オンプレミスで稼働しているシステムであればクラウド環境へ移行する「リフト&シフト」というアプローチもあります。まずは既存システムをそのままクラウドに移行し(リフト)、その後段階的に最適化していく(シフト)という方法です。

インフラ負荷を削減しつつ、段階的に刷新できるため、リスクを抑えながら技術的負債を解消できます。AWS、Azure、GCPといったクラウドプラットフォームを活用することで、スケーラビリティやセキュリティの向上も期待できます。

AIエージェントを活用した技術的負債の解消

最近では、AIエージェントを活用して技術的負債を効率的に解消する動きが広がっています。ここでは、実際の企業事例を通じて、具体的な活用方法を見ていきます。

LINEヤフーの事例 – AIで不要コードを削除

Yahoo!フリマのバックエンド開発チームは、AIコーディングエージェント「RooCode」を活用して、不要になった分岐コード(技術的負債)の削除に取り組みました。

結果:

  1. 3週間で6個のプルリクエスト(PR)を作成し、放置されていた不要な分岐コードを複数削除
  2. コードベースが軽量化され、心理的負担が軽減
  3. 人間が多忙な時でもAIに先行作業を行わせることで、生産性を維持できた

成功のポイント: この取り組みで重要なのは、AIに丸投げするのではなく、人間が設計をレビューし、承認プロセスを設けることで安全かつ効率的に解消したという点です。AIはあくまで「手足」として活用し、判断や承認は人間が行うという役割分担が、成功の鍵となりました。

参照元:LINEヤフー Tech Blog – AIで進める技術的負債の返済

まとめ

技術的負債は、開発時に後回しにした改善や、とりあえずの対応が積み重なった結果、将来的に支払わなければならないコストです。放置すると、開発速度の低下、保守コストの増加、ビジネスリスクの増大につながります。

解消には、まず負債を可視化し、優先順位を付け、解消ロードマップを策定するという戦略的アプローチが必要です。その上で、リファクタリング、再構築、段階的な移行といった具体的な戦術を組み合わせて対応していきます。

また、最近ではAIエージェントを活用して効率的に解消できる可能性も広がっています。ただし、AIに丸投げするのではなく、人間が設計をレビューし、承認プロセスを設けることが重要です。

技術的負債は、完全にゼロにすることは現実的ではありません。Shopifyの25%ルールのように、継続的に一定の割合で返済していくという考え方が、持続可能な開発体制の構築につながるのではないでしょうか。

オプスインでは、技術的負債を抱えるWebシステムやモバイルアプリのリプレイス・リファクタリングをサポートしています。技術顧問サービス(CTO代行)による戦略立案から、実装・保守まで一貫して対応可能です。お気軽にご相談ください。

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オプスイン編集部
オプスイン編集部
東京都のwebアプリ、スマートフォンアプリ開発会社、オプスインのメディア編集部です。
・これまで大手企業様からスタートアップ企業様の新規事業開発に従事
・経験豊富な優秀なエンジニアが多く在籍
・強みはサービス開発(初期開発からリリース、グロースフェーズを経て、バイアウトするところまで支援実績有り)
これまでの開発の知見を元に、多くのサービスが成功するように、記事を発信して参ります。

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