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思い描いたアイデアを形にするSaaS開発の全体フロー|初期外注から段階的内製化への現実的アプローチ

SaaSの基本的な特性と事業展開の課題

クラウド上で提供されるSaaSは、利用者がインターネット経由で機能を利用できる利便性があります。また、月額・年額などのサブスクリプション型の料金体系と組み合わせることで、継続的な収益モデルを構築しやすい点も特徴です。

しかし、自社内にエンジニアやプロダクトマネージャーなどの開発体制を持たない企業にとって、構想段階から実際のサービス公開、さらには公開後の運用に至るプロセスには多くの検討事項が存在します。開発を外部のパートナー企業へ委託しつつ、将来的な事業成長に伴って自社内製化へ移行するアプローチは、リソースや知見が限られた初期段階において有効な選択肢の一つとなります。

本記事では、SaaS開発の全体的なフローをはじめ、一般的なWebシステムとの構造的な違い、非エンジニア企業が抱えやすい開発体制の課題、そして外注から内製化へとスムーズにシフトするための具体的な戦略について論理的に解説します。

SaaS開発におけるプロジェクト全体のフロー

SaaSの開発プロジェクトは、単にプログラミングを行う期間だけでなく、事前の課題整理からリリース後の継続的な改善活動に至るまで、いくつかの明確なフェーズに分かれています。各フェーズで実施すべき事項を体系的に把握しておくことが、プロジェクト全体の進行を円滑にする基礎となります。

構想・要件定義フェーズで整理すべき課題と価値

SaaS開発の初期段階である構想・要件定義フェーズでは、「誰のどのような課題を、どのように解決するのか」というサービスの本質的な価値を明確化することが求められます。ターゲットとなる顧客層が日常業務や事業運営において抱えている具体的なボトルネックを抽出することが第一歩となります。

課題が特定された後は、それを解決するためのサービスコンセプトを整理し、ビジネスモデルとしての課金方式(月額定額制、従量課金制、フリーミアムモデルなど)の検討を行います。課金構造はシステムの設計や機能構築にも影響を与えるため、初期段階で方針を固めておくことが重要です。

また、構想したアイデアをすべて最初のリリースに詰め込むのではなく、開発範囲の優先順位付けを行う作業が不可欠です。提供したい機能の中で、コアとなる価値を提供する部分はどこかを厳選し、仕様として言語化していきます。この段階でドキュメントや要件定義書として明文化しておくことで、後の開発プロセスにおける関係者間の認識のズレを抑制することにつながります。

設計・開発フェーズにおけるMVP構築の考え方

要件定義が完了した後は、具体的な設計と開発のフェーズへ移行します。SaaS開発においては、初期段階からすべての機能を網羅した大規模なシステムを構築するのではなく、仮説検証に必要な最小限の製品(MVP:Minimum Viable Product)を構築するアプローチがあります。

MVP(Minimum Viable Product)とは、顧客に提供する価値や事業上の仮説を検証するために、必要最小限の機能や仕組みを備えたプロダクトを指します。単に機能を削った「小さな製品」ではなく、実際のユーザーからフィードバックを得て、仮説を検証することが重要な目的です。必要最小限の機能に絞って早期に開発・公開することで、開発期間の短縮や初期投資コストの抑制が期待できます。また、実際のユーザーに使ってもらうことで、想定していた課題解決アプローチが妥当であるかを早期に検証できるメリットがあります。

設計段階では、将来的な機能拡張やユーザー増加に耐えうるアーキテクチャ(システム全体の基本設計)の選定と基本設計を行います。開発手法としては、短期間で実装とレビューを繰り返すアジャイル的な手法を取り入れることもあり、進捗状況を確認しながら段階的に機能を形作っていくプロセスが採られます。

テスト・リリースフェーズでの品質検証と市場投入

開発が完了した機能は、実際の利用環境を想定したテストと品質検証のフェーズに入ります。ここでは、システムが仕様書通りに動作するかどうかという単体・結合テストだけでなく、実際のユーザーがどのように操作するかという業務シナリオに基づく動作検証(シナリオテスト)が実施されます。

SaaSはインターネット経由でサービスを提供するため、サービスの特性や想定利用規模に応じたセキュリティ対策が重要です。必要に応じて脆弱性診断や負荷テストなどを実施し、リリース前にリスクを確認します。

品質検証を経て、いきなり全ユーザー向けに公開するのではなく、本番環境への全面公開に先立ち、対象ユーザーを限定してベータ版として提供する方法もあります。ベータ運用を通じてシステムの安定性や使い勝手(UI/UX)に関する実効的なデータを収集し、本番リリースに向けた細かな調整を行います。本番リリースの際には、スムーズな移行と障害発生時の切り戻し手順を定めた運用体制を整えておくことが重要です。

リリース後の継続的運用とアップデートサイクル

SaaSは、サービスをリリースして完了するのではなく、リリース後も継続的に改善・運用していくことが重要なサービスモデルです。市場に投入した後は、日常的なシステム運用の維持とともに、定常的なアップデートサイクルを回していく必要があります。

改善活動においては、定量的なデータと定性的なデータの両面から客観的な分析を行うことが求められます。定量データとしては、アクセスログ、各機能の利用頻度、画面の遷移率、解約率(チャーンレート)などをツールで計測します。一方、定性データとしては、ユーザーからの問い合わせ内容、アンケート結果、個別のインタビューやアプリストア等のレビューコメントなどを収集します。

これら定量的・定性的なデータを掛け合わせて分析することで、「どの機能が頻繁に使われているか」「ユーザーがどの画面で離脱しているか」「どのような操作性に不満を感じているか」といった課題が具体化します。抽出された課題に対して優先順位を設定し、定期的なバグ修正や機能改善、新機能の追加を繰り返していくことで、サービスの価値を継続的に高めていくことができます。

一般的なWebシステム開発とSaaS開発の構造的な違い

SaaS開発と一般的なWebシステム開発(受託開発による社内システムや受託型Webツールなど)は、同じWeb技術を用いて構築される点では共通していますが、その設計思想や運用モデルには構造的な違いが存在します。違いを理解しておくことで、適切な設計方針を立てることが可能になります。

スケールを見据えたマルチテナント・セキュリティ設計

一般的な社内システムでは、特定の企業や部署のみが利用するシングルテナント型の構成が採用されることがあります。一方、複数の企業やユーザーへ提供するSaaSでは、複数の顧客を同一のシステム基盤で扱うマルチテナント方式(複数の独立した顧客や組織が共通のインフラを使用しながら、各々のデータが隔離されている方式)が採用されるケースがあります。(ただし、SaaSのアーキテクチャはサービスの要件やセキュリティポリシーによって異なり、顧客ごとに環境を分離するシングルテナント方式などが採用される場合もあります。)

マルチテナント環境では、データベースやサーバーリソースを複数の顧客で共有する場合でも、テナント間のデータアクセスを適切に制御し、他の顧客のデータへ不正にアクセスできない設計が求められます。

また、利用企業数の増加に伴ってシステム負荷が変動する可能性があるため、サーバーリソースを柔軟に拡張・縮小できるインフラ構成(パブリッククラウドのオートスケーリング機能など)を検討することがあります。

ユーザー行動データに基づく機能改善と解約抑制への取り組み

単一の企業や特定のクライアントのために開発されるWebシステムでは、あらかじめ決められた仕様を満たすことが開発の主目的となり、運用開始後の仕様変更は個別の追加発注や大規模修繕の際に行われる傾向があります。

一方でSaaSモデルの場合、ユーザーは毎月または毎年の利用料を支払う契約形式をとるため、サービス内容に満足しなければ容易に他社サービスへ乗り換えたり解約したりすることができます。そのため、SaaSでは顧客の利用状況を把握し、継続利用につなげるためのプロダクト改善やカスタマーサクセス施策が重要になります。必要に応じて、利用状況を計測する仕組みをプロダクトに組み込むことも有効です。

具体的には、ユーザーがシステムをどのように利用しているかを計測する「プロダクトアナリティクス」(ユーザーの行動データを分析するツール)の仕組みを導入し、ログイン頻度や機能の利用状況、設定の完了率などを分析する方法があります。集計された利用行動データをもとに、活用が進んでいないユーザーに対して画面上でガイドを表示したり、カスタマーサクセス担当がフォローに入ったりするなど、システムと運用が連動した解約抑制プロセスが構築されます。

非エンジニア企業が直面する開発体制構築の課題

自社内にエンジニアやITの専門組織を持たない企業がSaaS事業に参入しようとする際、最も大きな障壁の一つとなるのが「開発体制の構築」です。最初から自社でエンジニアを採用し、内製チームを組織して開発を進める形が理想とされることも多いですが、現実にはいくつかの高いハードルが存在します。

IT人材市場の現状と採用におけるハードル

現在、国内のIT人材市場では深刻な人材不足が続いており、スキルを持ったエンジニアを獲得するための競争が非常に激化しています。

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、IT需要の伸びなど一定の条件を前提として、2030年のIT人材需給ギャップを約16万人~約79万人と試算しています。需要の伸びを高位としたケースでは、約78.7万人の不足が生じるとされています。このような背景から、特に実務経験のあるソフトウェアエンジニアやインフラエンジニア、プロダクトマネージャーなどの採用では、採用競争が激しく、必要な人材を確保するまでに時間を要する場合があります。

参照元:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(平成31年3月)

知名度や採用ブランドが確立されていない非エンジニア企業や新規事業立ち上げフェーズにおいては、求人を出しても求職者が集まりにくいという実情があり、初期段階から自社雇用のみでチームを揃えることには相応のリスクが伴います。

自社に技術知見がない場合の評価・選考の難しさ

エンジニア採用におけるもう一つの大きな課題は、「候補者の技術スキルや適性を自社内で客観的に見極めることが難しい」点にあります。社内に技術的な知見を持つ評価者がいない場合、面接での対話や経歴書の情報だけで、その人物が自社で開発しようとしているSaaSのアーキテクチャを正しく設計・実装できる能力を持っているかを判断することは容易ではありません。

ミスマッチな採用が発生した場合、開発の遅延や設計の根本的なやり直しといった事態を招く懸念があります。また、仮に一人のエンジニアを採用できたとしても、技術的な相談相手がいないことで負荷が高くなる可能性があります。

このように、初期段階からの完全内製化は採用難易度と運用面の両方においてハードルが高いため、自社の状況に合わせた現実的な体制構築のアプローチを検討する必要があります。

初期外注から段階的な内製化を目指す開発戦略

自社に開発チームがない企業がSaaS事業を現実的かつスピーディーに立ち上げるための有効なアプローチとして、「初期段階は信頼できる外部パートナーへ外注し、事業の成長に合わせて段階的に自社内製チームへ移管していく」という戦略が挙げられます。

段階的内製化のフェーズ分け

この戦略は、以下の3つのフェーズに分けて段階的に進行します。

【フェーズ1:立ち上げ期(外注中心)】

  1. ・外部開発パートナーの知見を活用
  2. ・迅速なMVP構築と市場検証
  3. ・自社はプロダクト企画・業務要件定義に集中

▼(事業検証の完了・ユーザー拡大)

【フェーズ2:移行期(共創・引き継ぎ)】

  1. ・1人目の自社エンジニアまたはプロダクトマネージャーを採用
  2. ・外部パートナーと並行開発を実施
  3. ・設計思想やコード、開発プロセスのドキュメント化と共有

▼(体制の定着・組織拡大)

【フェーズ3:成長期(内製中心)】

  1. ・自社開発チーム主導による新機能追加・運用
  2. ・外部パートナーは専門的なアドバイスや補完的リソースとして活用
  3. ・自社独自のノウハウ蓄積と迅速なプロダクト改善の実現

外部パートナー活用による迅速なプロダクト立ち上げ

新規SaaS事業の立ち上げにおいて最も重要な要素の一つは、「アイデアを速やかにプロダクトの形にし、市場での反応を確かめること」です。実績とスキルを持つシステム開発会社などの外部パートナーを活用することで、自社でゼロから採用や組織づくりを行う時間を抑え、迅速に開発へ着手できる場合があります。

適切な実績・技術力を持つ外部パートナーを選定できれば、自社だけで開発体制を立ち上げる場合と比べ、初期開発を迅速に進められる可能性があります。

初期フェーズにおいて自社側は、顧客課題の整理や業務仕様の策定、マーケティング活動など、自社が強みを持つドメイン領域にリソースを集中させることが可能になります。

事業成長に応じた段階的な内製チームへのシフト

MVPによる市場検証が進み、事業の成長性や今後の開発量が見えてきた段階では、自社エンジニアの採用や内製化を検討する方法があります。PMF(プロダクト・マーケット・フィット、市場ニーズとプロダクトの適合度)の進捗だけでなく、開発量、運用負荷、採用可能性、コストなどを総合的に判断することが重要です。

初期から一気に全員を自社雇用に切り替えるのではなく、まずは、外部パートナーとの技術的なコミュニケーションやプロダクト開発をリードできる人材を自社側に置く方法があります。候補としては、プロダクトマネージャーやテックリード(技術的な方向性を決める責任者)、リードエンジニア(チームの技術的リーダー)などが考えられます。自社に1人目の技術担当者が入ることで、外部パートナーとの議論がより技術的に深いレベルで行えるようになり、自社のビジネス意図を的確に開発へ反映しやすくなります。

その後、サービスの規模拡大や収益化の進展に伴い、フロントエンド(ユーザーが操作する画面・インターフェース)、バックエンド(サーバーやデータベースなど、ユーザーには見えない部分)などのエンジニアを段階的に採用し、徐々に自社主導で開発・運用を行える領域を広げていきます。

スムーズな内製化を実現するためのナレッジ継承プロセス

外注から内製化への移行を成功させるためには、初期の開発段階から外部パートナーに対して「将来的に自社へ開発を引き継ぐ構想があること」をあらかじめ共有しておくことが極めて重要です。

あらかじめ内製化の方針を共有しておくことで、外部パートナー側でもソースコード(プログラムの原始的な形)の可読性を高めるガイドラインの遵守、アーキテクチャ設計書の作成、API(異なるソフトウェアやシステムが連携するための仕組み)仕様書や環境構築マニュアルなどのドキュメント整備を並行して進めやすくなります。

実際の引き継ぎフェーズでは、契約を突如終了してすべてを引き取るのではなく、一定の引き継ぎ期間を設けることが推奨されます。(具体的な期間は、システム規模や運用体制に応じて設定します。)自社エンジニアと外部パートナーが並行して開発や保守作業を行う期間を設けることで、コードの意図やシステムの癖、インフラ(システムを支えるハードウェア・ネットワーク基盤)の運用手順などのノウハウ(ナレッジ)が直接伝達され、内製化に伴うシステム障害や開発スピードの低下といったリスクを抑えることにつながります。

SaaS開発プロジェクトを円滑に進めるための実践的なポイント

発注者(事業者)として自社内にエンジニアがいない状態であっても、プロジェクトの成功率を高めるために自社側で取り組むべき実践的なポイントが存在します。

顧客課題の明確化と提供価値の優先順位付け

開発を外部パートナーへ依頼する際、「どのような機能を実装したいか」という手段(手段の要件)ばかりを伝えてしまうと、本質的な課題解決から逸れた複雑なシステムになってしまう危険性があります。事業者が主導して整理すべきなのは、「どのような属性の顧客が、どのような場面で困っており、それを解決することでどのような状態を実現したいか」という目的(目的の要件)です。

顧客課題の裏付けを取るために、自社内の顧客窓口や見込み客へのヒアリングを実施したり、自社業務の中でプロトタイプを試用して課題の妥当性を検証したりすることが有効です。

また、予算や開発期間には上限があるため、要望するすべての機能を初期バージョンに盛り込むことは現実的ではありません。「この機能がなければサービスとして成り立たない核心的な機能」と「あれば便利だが後から追加できる機能」を明確に区別し、提供価値の優先順位を判断する役割は、発注企業側が主導権を持って担う必要があります。

開発パートナーとの透明性の高いコミュニケーション確立

外注による開発プロジェクトで発生しやすい問題の一つに、事業者と開発パートナー間における「認識の相違(ギャップ)」が挙げられます。専門用語の解釈の違いや、画面イメージのすれ違いがプロジェクト終盤で発覚すると、大幅な手戻りやスケジュールの遅延につながる場合があります。

こうしたギャップを防ぐためには、定例会議を一定の頻度で設定し、進捗状況や発生している課題、仕様の不明点を細かく共有するコミュニケーション体制を確立することが有効です。テキストでの連絡だけでなく、試作品の画面(ワイヤーフレーム(機能配置の基本構成)やプロトタイプ(試験的な試作品))を早期の段階から一緒に確認し、お互いのイメージを可視化しながら議論を進める工夫が求められます。

外部パートナーを単なる「作業の委託先」として扱うのではなく、事業の目的や背景を共有し、課題を共に解決する「ビジネスパートナー」として良好な関係性を構築することが、プロジェクトをスムーズに進めるための大きな要因となります。

まとめ

自社に開発チームを持たない状態からであっても、適切なプロセスと明確な戦略を持つことで、SaaS事業の立ち上げは十分に可能です。初期段階では外部の専門的なノウハウを活用して迅速にMVPを構築し、市場からの定量・定性データをもとにサービスを改善しながら、段階的に内製チームへと知見を移管していくアプローチは、開発体制や事業フェーズに応じた選択肢の一つと言えます。

まずは自社が解決したい顧客課題とサービス価値の定義から始め、最適な開発パートナーとともに着実な一歩を踏み出すことが期待されます。

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オプスイン編集部
オプスイン編集部
東京都のwebアプリ、スマートフォンアプリ開発会社、オプスインのメディア編集部です。
・これまで大手企業様からスタートアップ企業様の新規事業開発に従事
・経験豊富な優秀なエンジニアが多く在籍
・強みはサービス開発(初期開発からリリース、グロースフェーズを経て、バイアウトするところまで支援実績有り)
これまでの開発の知見を元に、多くのサービスが成功するように、記事を発信して参ります。

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