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2024年6月19日

ソフトウェア開発における技術債務とその管理方法

技術債務とは

技術債務(テクニカルデット、Technical Debt)とは、ソフトウェア開発において、短期的な利益や急速なリリースを優先するために、最適でない解決策や不完全な設計、コーディングの手法を採用することで生じる技術的負担を指します。

この負担は後にシステムの保守性、拡張性、パフォーマンスに悪影響を及ぼし、追加の修正や改善が必要となることが多いです。

技術債務は、財務債務に例えられることが多く、時間と共に利息(追加の開発コスト)が発生し、最終的には元本(初期の技術債務)を返済する必要があります。

技術債務は下記のように分類される。

設計債務

不適切なアーキテクチャや設計パターンの選択に起因する債務。

テスト債務

不十分なテストカバレッジや手動テストに依存することに起因する債務。

ドキュメント債務

ドキュメントの欠如や不完全なドキュメントに起因する債務。

技術債務の原因

技術債務が発生する主な原因には以下のものがある。

1.スピード優先の開発

短期的なデリバリーを優先するため、ベストプラクティスを無視したり、急ごしらえの解決策を採用する。

2.不適切なプランニング

プロジェクトの計画が不十分であるため、後から大幅な修正が必要になる。

3.リソースの不足

必要なスキルや経験を持つリソースが不足しているため、質の低いコードが生まれる。

4.コミュニケーションの欠如

チーム間やステークホルダー間のコミュニケーションが不足し、誤った設計や実装が行われる。

5.技術的負債の意識不足

開発者やマネジメントが技術債務の重要性を理解しておらず、債務の発生を許容してしまう。

技術債務の影響

1.保守性の低下

コードが複雑化し、修正や機能追加が困難になる。

2.  拡張性の低下

新しい機能を追加する際に既存のシステムとの整合性が取れず、開発コストが増加する。

3.パフォーマンスの低下

非効率なコードや設計がシステムのパフォーマンスに悪影響を及ぼす。

4.バグの増加

コードの品質が低下することで、バグの発生率が増加し、修正コストが増加する。

技術債務の管理方法

技術債務を管理し、減少させるための具体的な方法を下記にて説明する。

1. 技術債務の可視化

技術債務を明確に把握するためには、以下の手法が有効。

コードレビュー

定期的なコードレビューを実施し、技術債務の発生箇所を特定する。

静的解析ツール

SonarQubeやCodeClimateなどの静的解析ツールを利用して、コードの品質を評価し、技術債務の存在を明らかにする。

技術債務ログ

技術債務の発生箇所や修正が必要な箇所をログとして記録し、追跡可能にする。

2. 技術債務の評価と優先順位付け

技術債務の修正を効果的に行うためには、以下の基準で評価し、優先順位を付けることが重要である。

影響度

技術債務がシステム全体に与える影響度を評価し、影響が大きいものから優先的に対応する。

修正コスト

修正にかかるコストを評価し、コストが低く効果が高いものから対応する。

リスク:技術債務が引き起こすリスク(例えば、システムのダウンタイムやセキュリティリスク)を評価し、リスクが高いものから優先的に対応する。

3. 継続的なリファクタリング

技術債務を減少させるためには、以下のような継続的なリファクタリングが必要だ。

リファクタリングのスケジュール化

定期的にリファクタリングを行うスケジュールを設け、計画的に技術債務を減少させる。

小規模なリファクタリング

大規模なリファクタリングはリスクが高いため、小規模なリファクタリングを繰り返し行い、段階的に技術債務を減少させる。

4. テストの強化

テストを強化することで、技術債務の影響を最小限に抑えることができる。

自動化テストの導入

単体テスト、統合テスト、システムテストを自動化し、コードの変更による影響を迅速に検出する。

リグレッションテストの実施

リファクタリング後にリグレッションテストを実施し、既存の機能が正しく動作していることを確認する。

5. チームの意識改革

技術債務を適切に管理するためには、チーム全体の意識改革が必要である。

技術債務の教育

技術債務の概念やその影響についてチームメンバーに教育し、意識を高める。

技術債務の定期的なレビュー

定期的に技術債務の状況をレビューし、対応策を検討する。

技術債務の削減を目標に設定

技術債務の削減をチームの目標に設定し、継続的な改善を促進する。

まとめ

技術債務は、ソフトウェア開発において避けて通れない問題ですが、適切な管理方法を用いることでその影響を最小限に抑えることが可能です。

技術債務を可視化し、評価・優先順位付けを行い、継続的なリファクタリングやテストの強化、チームの意識改革を通じて、技術債務を減少させることが重要です。

技術債務を適切に管理することで、システムの保守性、拡張性、パフォーマンスを向上させ、長期的な開発コストを削減することができます。

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オプスイン編集部
オプスイン編集部
東京都のwebアプリ、スマートフォンアプリ開発会社、オプスインのメディア編集部です。
・これまで大手企業様からスタートアップ企業様の新規事業開発に従事
・経験豊富な優秀なエンジニアが多く在籍
・強みはサービス開発(初期開発からリリース、グロースフェーズを経て、バイアウトするところまで支援実績有り)
これまでの開発の知見を元に、多くのサービスが成功するように、記事を発信して参ります。

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